魔人に就職しました。第6話
前回のあらすじ
ペェスタ「なんだあいつは!後ろから首を跳ねてやろう。」
主人公「頭を下げれば大丈夫♪」
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やはり・・・
人の言葉ではない。やはりアレは魔の者だ。そして今までのどの敵よりも強い。一体何故、こんな奴が人間界に?いや、それよりも・・・
(まさかあの一撃が避けられるとは・・・)
アレを避けられた時点で、恐らくやつの強さは私以外のSランクハンターでも手も足もでないであろう。斯く言う私も勝てるとは限らないが、しかし!
(こいつは私が殺さねばならない!)
(私が今、ここで殺しておかねばならない!)
(一切の出し惜しみしない!)
私がここで奴を殺しておかねば何が起きるか・・・!
自分の後ろには守るべき者が、人が、国がある!
国のものにあの時の自分と同じ思いをさせないためにも!
守ると決めたものは例えこの身が滅びようと守り抜いてみせる!!
「《光を力に/エナジー・ライト》《光速の力/スピード・ライトフォース》」
ペェスタは自己強化の魔法を次々と唱えていく。1つ目の魔法は、光を自信の力に変換する魔法。
太陽光でも、月光でも、人口的な光でも光をなら自分の力に変換し続ける魔法だ。簡単に言うと、光を当たってさえいれば自分を強化し続ける事ができるトンデモ魔法なのだ。
2つ目の魔法は自身の速度を上げる魔法。《光の如く/アーズ・オブ・ライト》ほどの速度は出ないが、代わりに効果時間長い強化魔法だ。
続けて様々な自己強化魔法を唱えていく、《光で影/シャドウ・ライト》《光の鎧/ライト・アーマー》《閃光の反撃/フラッシュ・カウンター》《不屈の閃光/タフネス・フラッシュ》《光魔法強化/ライトマジックブースト》
「・・・」
そこまで魔法を唱えたあとに、改めて自身の目の前にいる敵をみる。
いつの間にか相手の手には剣らしき刃物が握られていた。
ペェスタは魔法の詠唱中でも敵から目を離してはいなかった。
が、しかしもう一度自身の覚悟が鈍らないように、敵を改めて視覚した。こちらが目視していたにかも関わらず一体どのタイミングで武器を手に取ったのかは疑問が残るペェスタだが、今はそのような考えは一瞬頭をよぎるだけであり、言ってしまえば今はどうでもいい事だった。
(相手が武器を持っていようがいまいが、関係ない。こいつ殺す!今はそれだけだ。)
「アーズ・オブ・ライ・・・ッッ!!!」
先ほどの奇襲時にも使った最上級自己強化魔法を使用しようとした刹那。
ペェスタは自身の首を剣で切られる瞬間を幻視した。
そのまま意識を刈り取られペェスタ・プラクターは地面に倒れ付した。
「・・・・・」
なんて物騒な奴だ。
いきなり背後に現れて、切りかかってくるとは。
避けるの結構ギリギリだったんだぞ。剣を構えて何かぶつぶつ言ってたからとりあえず、意識を斬ったけど。
と、言うかやはり、言語が違ったな、普通にショックだ。何か喋りかけられたっぽいから適当に答えたが、答えた後に殺気が増した。
俺、何か良くない事でも言ったか?「こんにちは」って挨拶しただけなんだが。
そもそも言語が違うから伝わらないと思うが、そこのところどうなっているのだろうか?
後ろのこいつら見たいに俺の言葉は相手に伝わっているのか?
いや、それだと挨拶しただけでキレたやベー奴って事になるな。流石に考えにくいか。
疑問は多い、だが、立ち止まってる訳にもいかない。こいつは・・・まぁ無視でいいか。殺してはしてない気絶させただけだし。大丈夫だろう。
「ヴォォォヴォォォ!!」
色々と考えていると、後ろが騒がしいのに気づいた。
「ヴォ!ヴォ!ヴォォォ!ヴォォ!」
「おい、急にどうした、落ち着け」
「・・・・・・・」
(緩急が激しいやつらだ。)
「一体どうした?何か騒ぐような事でもあったか?」
改めて質問をしてみる。
すると、一体のオーク(仮)が前に出て来て―――
「ヴォォオォォォ!ヴォォォォォヴォッヴォォヴォッ!」
指差しなどの軽いジェスチャーをしながら俺には理解出来ない言語で答えてくれました。
とりあえず、訳がわからない俺は指差しされた方向、自分の目的地である国を振り替えって見てみた。
「・・・・・・・・・・・」
言葉は出なかった。
何でそうなったかわからなかった摩訶不思議な現象だった。
何が起こっていたかというと。
国の外壁から見える城が、斬られていた。
このアドルフォン王国、そこそこの歴史を持つこの国に前代未聞の出来事が起こった。
通常でらあり得ない事に、この王国の城が斬られてしまった。何の物音もせず、まるで人の首を跳ねたように斬られた部分が少し宙を舞い。ほどなくして落下する。
ドゴォォォォォォオオオオオン!!!!!
突然の轟音。巻き上がる土煙。
それは国中に響き渡るほど大きなものだった。
その轟音に人々はパニックになり、民が国を駆け回った。
幸い、斬られた城が落下したところは城の敷地内の開けた場所であったため民家が下敷きになく、被害は城の敷地内の出来事に収まった。
ただ、城の敷地内の被害は甚大であり、死者こそ出なかったものの、城に使えていた使用人や兵士、たまたま来ていたハンター数名と、貴族数名が重軽傷をおっていた。
この国王は、と言うと、今日は奇跡的に私用で城の敷地内外に出掛ける、いわゆるお忍びの外出をしており難をのがれていた。
「な、なんじゃ!今の音は!!」
「国王様!城の方からです!!」
轟音に驚いて声を上げ、自身の護衛に問いかける。護衛は城の方から立ち上る城を隠すほど大きい土煙を確認し、王の質問に答えた。
「一体何が・・・」
「わかりません。ただ、城で何か起こった事は確かです。もしかしたら敵襲かもしれません。私が確認してきますので、国王様はこのままどこかに隠れていてください!」
「頼むぞ、戦士長」
「はっ!お任せください。」
「お前たち!国王様を安全な所へ」
「「はっ!」」
護衛で来ていた戦士長と呼ばれた男は自分の部下に国王を安全な場所に避難するように指示する。
国王様何かあってはまずいのだ。
部下に連れられて避難する国王の後ろ姿を見届けたあと、城の方向に走り出す。
「な、なんだ!これは!!」
戦士長は城の入り口まで来て驚きの声を上げた。城につくまでには巻き上がっていた土煙はほとんどなくなっていた。その為、城の状態が確認できた。城は上半分がなくなっていた。理解出来ない状況で一瞬唖然とするが、直ぐに辺りを見渡し少しでも多くの情報を得ようとした。
「おい!そこのお前何か見たか!!何があった!!」
戦士長は入り口付近で棒立ちをしている兵士を見つけ、直ぐに近寄り問いただした。
「せ、戦士長・・・!」
「おい、何があった!一体この国で何が起きた!」
「そ、それが・・・し、城が・・・」
「城がどうかしたのか!」
「城が・・・城が斬られました!!!」
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【魔法紹介のコーナー】
《光の屈折/ライトオブリファレクション》
修得ランク S
必要魔力量 S
効果時間 B
再詠唱待機時間 A
【光】属性最上位魔法の1つ。
常人では唱えることすら出来ないほどの必要魔力量で、この魔法を使えるものは極少数であり、使いこなせる者は片手の指で数える程である。
効果は名前の通りに光を屈折させる。
ありとあらゆる光を屈折させられる事ができる。太陽光だったり、物体が反射する光だったり、同じ【光】属性も操れる。
もちろん光の量によって必要魔力がふえる。
もし仮に魔力が無限にあるの者がこの魔法を使えば世界の全て光を操れる。
弱点としては必要魔力の高さと、効果時間。
最大効果時間がそこまで長くなく、効果時間が長ければ長いほど必要魔力が増える。その為一瞬だったり、短時間での使用が推奨される。
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この始末☆
いやー、一体どこの主人公がやらかしたんでしょうねー()
とりあえず、今回でこの話を思い付いた時に考えた展開までは書くことができました。いやぁ、懐かしい。
魔法はの名前はわりかしテキトーです。センスがないのは自覚してるので、あまり触れないでくれると幸いです
主人公はまだ人は殺しません。そう、『まだ』ね。
魔人に就職しました。第5話
前回のあらすじ「主人公の敵キャラっぽい新キャラ登場!」
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ペェスタは先ほどの受付嬢とのやりとりの内容通りにこの国の周辺を見回る為に南門から外に出た。彼は依頼の無い時はいつも外に出ては、魔物が寄って来てないか、何か異常が無いかを見回っている。それは彼がハンターになってからずっと続く彼の日課見たいなものだった。
南門から少し離れた所でペェスタは1つの魔法を使用した。
「《光の屈折/ライト・オブ・リファレクション》」
《光の屈折/ライトオブリファレクション》という魔法は【光】属性最上位魔法の1つ。効果は名称の通りに光の屈折を自在に操る事ができる。例えば光を一点に集中させて攻撃を行ったり、相手の視界を遮ったり、逆に自分の視界を広げる事もできる。さらに一部の【光】属性魔法を操る事もできる。というかなり自由度が高い魔法である。
もちろん欠点もあり、同時に2つ以上の光は操れなかったり、【光】という高度な物を扱うのでかなりの技術、集中力を要する。
しかしペェスタは得意属性が【光】という人間では極めて稀な存在であり、尚且つ才能にも恵まれていた為、彼はそんな高度な魔法を使用する事ができる。
そして彼は光を屈折させて、望遠鏡のように遠くを見るためにこの魔法を使用したのだ。
「ふむ・・・特に気になる物はないかな?」
彼は暇な時にこうやってこの街のを周りを得意な魔法で見渡してパトロールする。これが彼の日課の一つだ。
「む?・・・あれはいったい・・・?」
ペェスタは辺りを見渡していると、奇妙な集団を発見した。トロルとゴブリンの群れだ。だがトロルとゴブリンが群れを成すのは別に珍しくはない。彼が疑問に思ったのはその群れを率いている様に先頭を歩いている者。見た目からして人間に見えるが、見慣れない全身黒い衣服を着ており、背には黒い棺の様な物を背負っている。
「何だあいつは・・・」
(魔物を従える人間など聞いた事もない。そもそも魔物が人間に従うなどありえない・・・)
現在どんな魔法を行使しても魔物を従える事など出来ない。混乱させたり等して一時的に誤認させる事は可能だが、魔の物と敵対している人間にしっかりと隷属させる方法は存在しない。
(ならば奴も魔の物の類いか・・・)
ペェスタが魔物嫌いという話は有名だ。彼は幼い時に両親を魔物に殺されている。それも目の前で。そんな事から彼は魔物に強い憎しみや、恨みを持ちいつかは魔物を根絶する目的を持っている。
そんな彼が街の周辺で魔物を見つけて放っておくなんて無理な話だ。
ペェスタは群れを率いる正体不明のものを敵と判断しその者を殺すと決め行動にうつす。
「《光の如く/アーズ・オブ・ライト》」
魔法を唱えたペェスタの体がうっすらと発光する。この魔法は光の如く素早く動ける様になる魔法だ。かなり強力な魔法であるためこの魔法には大きな難点が2つある。1つは使用する魔力が膨大である事、もう1つはこの魔法の効果時間が2秒という極僅かな時間しか効果が続かない事である。
だが、その2秒という時間は十分すぎる。2秒という時間はこの世界の一流の剣士であるペェスタにとって遠く離れた相手に奇襲して撤退するだけの十分な時間なのだ。
そして今回も自分が得意とする戦法――――この魔法で奇襲をしかけそのまま首を跳ね、直ぐに離脱をするという戦法を取るつもりだ。
魔法を唱えたペェスタは直ぐに剣を構え、自身の剣に少し魔力を流し込む。もちろん彼の持っている剣は普通の剣ではない。彼の剣はいわゆる魔法武器と言われる物だ。
彼の剣は魔力を少し流すだけで鋼鉄を簡単にスライスできるだけの切れ味になる効果がある。
魔物には防御力が高く、体が硬いものも存在する。その為ペェスタは希少な素材を集め特注でこの魔法武器を作ったのだ。そして今までこの武器を使用してペェスタが切れなかった魔物はいない。
「――――――ッ!」
力を込め、大地を蹴り抜く。
相手の正体が不明な為、中途半端な力では万が一があるかもしれないのでペェスタは最初から全力で行動する。先手必勝だ。
これより行われる攻撃はこの世界では最強クラスものだろう。
人では認識する事ですら困難な速度で後ろに周り込み奇襲をしかける。そしてその剣は鋼鉄をも簡単には切り裂く剣。狙う場所は基本的な生き物の急所である首。
どんな相手にも回避はほぼ不可能な攻撃。
ペェスタは高速で真後ろに回り込み、未だこちらの存在に気付いてないであろう対象の首を目掛けて思いっきり剣を振り抜いた―――――
だが、剣は空気中を切り裂いただけであった。一瞬ペェスタも何が起こったか分からなかった。
対象が避けたのだ。
お辞儀するように腰を前に曲げる事で後ろから首を狙う攻撃をかわした。
これらの一連の出来事について実は対象はかなり驚いていたが、それよりもペェスタの方がショックが大きかった。
彼はこの攻撃がかわされたことなど一度もなかった。それゆえにこの攻撃に絶対の自信があった。それが初見でかわされた。いや、仮に見たことがあり知っていたとしても簡単に避けれる物どはない。ペェスタは大きなショックを受け、色々と考えが浮かぶ。
その為行動が少し遅れてしまった。ハッと魔法の効果があと僅かなのを思い出し、自分の攻撃を避けた異質差を考えると一旦距離を取った方が良いと考える。本当ならばあと一撃加えたい所であるが、無駄時間を過ごしてしまったため時間の猶予がない。
ペェスタはしぶしぶ、魔法の効果が続いている内にバックステップをして対象から離れ距離を取った。
魔法の効果が切れたようで薄く発光していたペェスタの体が元に戻る。そしてペェスタ改めて対象を確認する。そして対象もまたペェスタを確認していた。
両者の目が合い、しばしの沈黙が続く。
「何者だ・・・お前・・・」
先にペェスタが疑問を問いかけた。それは純粋な言葉通りの疑問半分、もしかしたらという疑念半分のものだ。知性が高い魔物は喋る事が出来る。魔物を統率している者なら尚更喋れる可能性がある。ならば何か情報を得られるかもしれない。
しかしその者をから帰って来た返事は――――――
「◯Χ%□#△●☆□♯▽◇」
人の物では無かった。
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【キャラクター紹介】
ペェスタ・プラクター
種族 人間
ステータス
体力 S
魔力 S
素早さ A
知性 A
物理攻撃力 S
物理防御力 S
魔法攻撃力 S
魔法防御力 A
成長性 B
弱点属性 闇
特異属性 光
特殊特性 超魔法適正【光】
ハンターの中でも数少ないトップクラスのSランクハンター。
その戦闘力はこの世界でもトップクラス。
彼は生まれつき、超魔法適正【光】という特殊特性を持っており光属性の魔法を使用する場合、その魔法に使用する魔力の半減させる効果がある。
出身は王国周辺の普通の村。
子供の時に村が魔物に教われ両親を無くした。そのため魔物を心底恨んでおり、ハンターになったのも魔物を駆逐させるという野望を抱いているからである。
得意属性が【光】であり、更に超魔法適正【光】という生まれつき光属性特化体質であるため、比較的魔力の使用量が多い光属性魔法を実質5/1程度の魔力で使用できる。加えて魔力量も常人より多くステータスからだと魔法特化の人物である。しかし彼は魔物を魔法で倒すと『殺した実感がない』という歪んだ思いから剣士になってしまう。そしてその結果今までになかった魔法剣士という職業を開拓してみせた張本人でもある。
因みに特殊特性がある人間は少数である。そのため得意属性と特殊特性が上手く合ったのは世界でも彼意外で要るか居ないかぐらいである。
魔人に就職しました。第4話
前回のあらすじ:主人公パーティーが結成!(9割人外)
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(何か、見えてきたな)
人がいると教えて貰った方に歩き続けていると、うっすらと建造物が見えてきた。
まだ距離があるためぼんやりとしか見えないが、囲いの様な物がありその中に中世にありそうな城が頭を出している。
「・・・あれか?」
確認のため、人間の事を教えてくれたオーク(仮)に話かける。
「ヴォオ!」
「そうか」
俺は道中に少しでもこいつらの事を知ろうと、コミュニケーションを取ることにした。その際に名称を仮として決めてみた。見た感じこいつらは2種に別けられる。
まずはゴブリン(仮)。
背は低く、皮膚は緑色をしている。
ファンタジー系に、うとい俺でもわかるぐらいまさにTHE・ゴブリンって感じだったのでそのままゴブリン(仮)と呼ぶことにした。
(仮)が付いているのは、もしかしたら名称が違うという、少し恥ずかしい事になるかも知れないから。
次にオーク(仮)。
大柄で背は高く、肌は全体的に濃い目の茶色をしており、皮膚は少しぶよぶよと弛んでいる。
こちらは知識が乏しい俺では外見から判断する事ができなかった。
オークという名称も聞いた事があるだけで、名称の勝手なイメージだけで付けて見た。そして、俺の質問に答えている者はオーク(仮)の方だ。
会話についてだが、こいつらが言ってることを俺が理解出来ないが、そんな中でも『はい』や『いいえ』などの簡単なものは何となくだが分かるようになった。そして何故かは分からないが、俺の言葉はこいつらに通じている為、最低限の会話は出来なくもない。
「はぁ・・・」
確かに街はあったが、元の世界?に帰るとしても、この世界?に居続けるにしてもまずは情報が必要だ。
そして、人間がいるなら情報のほとんどが会話や言葉のはずだ。
そして今、俺が危惧している事はその言葉・・つまり言語だ。こいつらとのコミュニケーションに悩んでいる時から思っていたのだが、この世界の言語が俺の世界の言語と違うのではないか?
というか、同じということはないだろう。俺が喋れるのは日本語だけだし、そもそも日本語自体がかなり特殊なものであるため、可能性はかなり低い。
(せめて英語とかであってくれ・・・)
俺は密かに言語が俺の世界に既存していて、俺の知識にあるものであってくれと心のそここら祈った。聞いたこともない言語を一から覚えるのは流石にきつい。てか無理。
ここはアドルフォン王国
魔王が勇者に封印されてから十数年。
世間ではこの街が、勇者が一番最初に訪れた街、と知らない人間はいないほど、この街は近年で一番発展した街だった。
そして今この国で、いや、すべての国で話題になっている職業がある。
それは[ハンター]といわれる職業だ。
勇者は魔王を封印はしたが、魔王を封印しても魔物の存在が消える事はなかった。むしろ、魔王というトップの存在がいなくなったことで、凶暴化したり、異常な行動とる魔物や、好き勝手に暴れまわる魔物が増える事になった。
そこで一般人でも高い実力を持ってはいるが、それをもて余している者が多数いることを知った王は、魔物を討伐する職業を作り、民間及び国から依頼を貰うことで、そういった魔物の被害から民を守る仕組みをつくった。
それが[ハンター]という職業だ。
ハンターは皆、ランク付けをされており下から、[F]・[E]・[D]・[C]・[B]・[A]・[S]といった計7段階で別れており、依頼の対象モンスターや場所、数等の様々な情報を元に依頼自体のランクを定めて、同ランクかそれ以上のランクの者だけが受ける用にしている。
これは、ハンター達が自分の実力に見会わない依頼を受けて死亡してしまう事を未然に防ぐためである。
ハンターを新しく始める際は皆ランクはFから始まる。そこからいくつかの依頼をこなしていき、依頼の内容や依頼の達成スピードなどからその人物の実力を測定して、実力が今のランクより高いと判断された場合にランク上げる事ができる。
その中で最も高いランクはSランクであるが、そこに所に至までの難易度は高く、ハンターがこの街に500人以上要る中でSランクのハンターはわずか8人である。この事からSランクというものがどれだけ高い難易度が高いか分かるだろう。
そのSランクのハンターでの中でもトップの存在と言われている者がいる。
ハンター達が依頼の受注や手続き、その他様々サポートを行う施設、通称[ハンター組合]。一つの国に最低一つはあり、ハンター達は依頼の受注や手続き等を行う場合は全てこの施設で行わなければならない。
ハンター組合はいつも多数のハンターがおり常に少なからず賑わっている所である。そんな騒がしい場所の扉をバン!と音が鳴る程度に少し勢い良く開かれた。
その音に反応して周りのハンター達が音の発生源に注目した。扉から目立つ白色の鎧を着た男が歩い来て、その男は迷わず依頼の受付等を担当する受付嬢の所まで足を進めた。
「今朝受けた依頼を完了した。確認してくれ。」
「お、お疲れ様です。ただ今確認致しますので少々お待ちください。」
男は今朝に依頼を受けたハンターだったらしく、その依頼が今しがた完了したのでその報告に来たのだ
男の依頼完了報告を受けて、何かに少し驚きながらも受付嬢は受け答えをした。
「マジかよ・・・いくらなんでも早すぎだろ・・・」
「Sランクの依頼をこんなにもあっさりこなすとは・・・」
「やっぱSランク最強の男はちげぇな!!」
Sランク依頼とは最高ランクの以来でありSランクのハンターのみ受注が可能な最高難易度の依頼である。
その男の依頼完了報告を見て周りのハンター達は騒がしくなる。
驚き恐れる者、強く関心する者、嫉妬で悔しがる者、など様々な反応で組合全体が騒がしくなった。
「お待たせ致しました。確認が取れましたので、これで依頼は完了となります。お疲れ様でした。」
しばらくして依頼の完了確認を終えた受付嬢が戻ってきて、無事に確認が取れた事を伝えた。
「ああ、それで次の依頼なんだが・・・」
「も、申し訳ございません。現在受ける事ができる、Sランクの依頼はございません。」
「そうか・・・ならいつも通りに国周辺を適当に見回っているから依頼が来たら知らせてくれ」
「はい。了解しました。」
男は次の依頼がを希望したが、現在受けられるSランクの以来や緊急性を要する依頼はない。男は自分が受けられる依頼がないと知り、そして次の以来が来るまで国の周辺を見回ると言い出した。
そのやり取りを聞いていた回りのハンター達は再び多種多様な反応を見せていき段々と騒がしくなった。
そんな事を気にも止めず彼は組合から出ていった。
実はこの男こそ、この国でわずか8人しかいないSランクのハンターであり、その中でもトップのハンター。
名を[ペェスタ・プラクター]という。
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【キャラクター紹介】
ゴブリン(仮)
種族 ゴブリン
ステータス
体力 D
魔力 E
素早さ D
知性 C
物理攻撃力 E
物理防御力 E
魔法攻撃力 E
魔法防御力 F
成長性 D
弱点属性 水 炎
特異属性 地
緑掛かった肌で低身長なモンスター。身長は成体で120cm~130cm。全体的にステータスは低く、Dクラスのハンターが余裕で倒せる程度。この世界では比較的よく見かける事がある魔物。
主に集団で行動しており、一体だけでいるのは稀である。そこらのモンスターと比べると知性が高く、木で作った武器や集団戦闘、弓での遠距離攻撃、他のモンスターとの連携など、多彩な事ができる為、集団でいる場合は注意が必要。
得意属性が【地】であるが、ゴブリンが魔法を使用するのはかなり稀である。
オーク(仮)
種族 トロル
ステータス
体力 B
魔力 B
素早さ D
知性 B
物理攻撃力 C
物理防御力 E
魔法攻撃力 B
魔法防御力 B
成長性 E
弱点属性 光・闇
特異属性 炎・水・風・雷
主人公は名称をとりあえずオーク(仮)としていたが、実はトロル。
全体的に濃い目の茶色をした肌をしており、皮膚はぶよぶよとしている。体長は2mにも及ぶ。その巨体から物理特化と思いがちだが、実際は魔法特化モンスター。一対一でもBクラスハンターが倒される事もある。そのためAクラスハンターに昇格する際の昇格試験モンスターに含まれる。
得意属性が【炎】・【水】・【風】・【雷】と、いった【光】・【闇】以外の単一属性全てである。だが得意でないだけで【光】・【闇】の魔法も使える。
さらに訓練をすれば、稀に複合属性を使用できる個体が現れる。
物理防御力が低いのはトロル系特有である、ぶよぶよの皮膚によるもので物理防御力が低い代わりに魔法防御力が高い。
因みに主人公に受け答えをしているのはトロルの方。だが、普段のトロルは鳴き声をあまり上げないため主人公に受け答えをしている一体だけのテンションが異常なのである。
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魔人に就職しました。第3話
前回のあらすじ:柔らかいナニかをゲットだぜ!
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「お・・・抜けたか」
俺はやっとここを抜けた。
だいたい2時間ぐらい掛かったか?
この森林は思ったより広く、とても素晴らしい森林だった。
感動の余韻よいんに浸りつつ、何かないかと辺りを見渡してみる。
「・・・何もないのかよ」
入ってきた所からそのまま直線に歩いて来て反対側にでた。だが、見渡しても特に何か有るわけでもなく、最初に居た所と同じ草原が広がっているだけだった。
どうするか、この草原をこのまま直線に歩いて行けば何か見えて来るだろうか?いや、何も無かった時のリスクが高いか。
「どうしますか、スライムさん」
この森林を歩いている最中に運命の出会いをした、謎のゼリーについて撫でまくりながら考えた。
いつまでも謎のゼリーじゃ変だし何か名称を、と今までの情報から考えた結果、とりあえずは名称はスライムになった。実際は違うかも知れないが謎のゼリーよりは良いだろう。
俺でもスライムとかゴブリンとかのファンタジーに良く出てくる簡単な奴なら知っている。マイナーな奴は流石に解らないが。
そして、[さん]を付けてる理由は単に素晴らしいボディを堪能させてもらったので敬意が表れてしまっただけだ。
俺の呼び掛けに対し、返事が無いように見えるが実はきちんと反応があるのだ。
―――プルップルプル
―――プルプルプルリン
このようにプルプルのボディをプルプルさせて反応してくれる。
反応してくれると言うことは聞こえてはいるのだろう。ただ、プルプルしてるだけの反応にどんな意味が込められてるいるのかは皆目検討もつかない。なので―――
「なるほどな、確かに木に登って高い所から見渡せば何か見えるかもしれないな」
と、このように自分で言って自分で答えるという一人芝居を行っている。
一人芝居を終えたあと、本当に何か見えるかも知れないので、試しに木に登ってみる。
片手でスライムさんを抱え、でかい木の枝を《ジャンプ》で登っていく。抱えてるスライムさんがいつもより少し多めにプルプルしてるが、気のせいだろう。
「よっと」
一番高い枝まで登り、辺りを見渡してみる。しかし、特にこれといった物は見当たらなかった。
(やっぱり何もないのか・・・)
そう思った矢先、遠くの方で動くものを見つけた。なんだ?と思い目を凝らして見てみる。
「人・・・か?」
ハッキリとは解らないが、人の様な二足歩行をしてる生物の集団のようだ。
「これは行ってみるしかないな」
集団行動をしている、二足歩行の生物は人間ぐらいだろう。と、完全に人だと思いこんでいた俺は、色々と情報を得るためにスライムさんを抱えたままその集団にダッシュで向かった。
最上 悟。
彼はいわゆる【達人】である。
彼は、特に不思議な事はない、とばかりに木の枝をジャンプで上に上がって見せたが、そんなことは常人では不可能だ。
彼は少し壊れている。
正確には壊されたと言うのが正しいが、結局壊れてる事にかわりはない。
彼が今、とても人間とは思えない速度で草原を一直線に駆けている。彼はより効率よく、より素早く走るテクニックを彼は知っており、それを可能なだけの技術と力があるのだ。
悟と、謎の集団の距離がドンドン近づいて行く。まだ、ハッキリとは見えないが謎の集団の方は、高速で近づいてくる存在に気がついた用だ。高速で近づいてくる物体を確認した集団は驚き、混乱してる者も要れば、警戒して武器を構える者もいる。
謎の集団が、ざわざわしてる最中も悟との距離は縮まり、だんだんと集団の正体が見えてきた。
お互いがハッキリと見える距離で、急に距離が縮まなくなった。理由は悟が急停止したのだ。
(・・・あれ?人間じゃ・・・なくね?)
悟が急停止した理由は簡単だ。
人間だと思い込んで張り切って走っていたが、実際にはホラー映画にいてもおかしくない、人間とはかけ離れた化物の集団だったのだ。
「「・・・・・・・・・・・」」
急な出来事にお互いが沈黙し、微妙な空気が流れる。
しばらくして、その沈黙に耐えかねたのか沈黙を破るように悟が歩きだし、走っていた時より格段にゆっくりとではあるが、距離を縮めていく。
距離がある程度近づいた所で――――
「こんにちは」
悟が挨拶をした。しかし、言葉が通じてないのか特に返事は返って来ることはなく、集団がざわざわしだした。
「えー、俺はあなた達に危害を加える気はありません。安心してください。」
スライムを抱えていな方の腕を上げて、少しでも敵意が無いことをアピールしながら、一応、言葉でも敵意が無いことをアピールした。だがやはり、伝わらなかったのか特に反応は見られなかった。
(どうしたらいいんだ・・・)
こちらの意思が伝わらない。が、集団で行動しているところを見ると知性は十分にあると思われるので、何とかこちらに害が無いことを伝えたい。
悟は、何とか方法が無いかと考えだし、またもや沈黙が生まれる。
――――プルプルプルルプルンプルプル
先ほどからスライムがいつも以上にプルプルしている。悟はそれを怯えていると判断し、いざというときに逃げれる用に抱え直す。
(安心してくれ、何があってもスライムさんだけは命に変えても守りぬくからな)
そんな決意をして、万が一襲われたとしても逃げれるように何時でも逃げれる用に準備をする。
―――ゴトン
突然、集団の方から硬く重い物が落ちたような音が発せられた。そして、次の瞬間には――――
化物の集団が全員、跪づいていた。
何がどうなってんだ・・・
なんでこいつらは跪づいているんだ?意味分かんねえよ!
「ヴォオォオ!ヴォヴォッヴォオオォ!!」
本当に意味が分からねぇよ・・・
何んて言っているんだ?こいつら。
意味わからなすぎて恐えぇよ。
「あー、皆さん落ち着いてください。とりあえず、立ち上がって貰えますか?」
「ヴォオ!!」
――――バッ!
何でそんなに張り切っているんだよ、立つだけなのに勢いつけすぎだろ。どこかの軍隊かよ。
俺、何かしたか?挨拶と害がないアピールしただけなんだが・・・
というか俺の言葉が通じてるのか?一応、立ってくれという要望には答えてくれたが、向こうが何いっているか解らないからどうも判断がつかんな。
「えーっと、ここら辺に俺みたいな人間が居るところを知っていますか?」
とりあえず、質問してみた。
向こうに俺の言葉が通じてるのかの確認と、人間について聞いてみる。俺はまだ、現実にはいないと思われるびっくり生物しか合っていない。
もう、外国とかより世界そのものが違う所に来てしまった気がしてきている。だから是非、人間の有無は確認しておきたい。そして出来れば人間は存在していてほしい・・・
「ヴォオヴォ!?ヴォヴォヴォオオオヴォヴォォ!」
何も無いところに指を指して何か言っている。これは、向こうに人間が居るって事で良いんだろうか?
まぁ、どこに向かえば良いか分からなかった所だ。次の目的になる情報を貰えたのはとてもありがたい。
たとえ、人間がいなくても何かしらはあるだろう。考えなしに指を指した訳ではなさそうだったからな。
「そうですか、貴重な情報をありがとうございました。」
「では、俺はこれで。」
お礼を言い、軽く手を上げてそそくさとその場を立ち去る。これ以上関わるとややこしい事になりそう、とか思っているのでやや早足でその場こら離れる。教えてくれた事に対し、お礼をきちんと言ったから俺がこれ以上関わる必要もないだろう。
いやぁ一時はどうなることかと思ったが、特に襲われることもないし、情報も貰えたし良い奴らだった。少し不気味ではあったが。
――――ザッザッザッ
ん?何だ後ろから足音が聞こえる。
まさか・・・いや、でも何故だ?
疑惑を明確にするために、真実を確認するために振り替える。
するとそこにはさっきの集団がついて来ていた。
いや、何でだよ!
何で、付いていてくるんだよ!
あって数分しかたってないよね!?
そして何だ、その謎の眼差しは?
なんかこう、「一生ついていきます!」みたいなキラキラした目で見てくるのだが・・・
「・・・何でついてきているんだ?」
「ヴォ!ヴォオヴォヴォオォオ!」
「・・・・・」
全然意味が分からん。
う~ん見た感じとても友好的?で、別についてくるのは嫌ではない、嫌ではないのだが、面倒くさそうだ。
「はぁ・・・まぁいいか」
諦めたように化物の集団を受け入れる。
付いてくるなら道中に少しでもこいつらの事を知る事ができれば、色々と新たな情報がえられるかも知れない。一応、メリットはある。
そして、俺は溜め息を吐きながら目的に向けて歩いて行った。後ろに化物の集団を引き連れて。
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化物の集団の詳しい説明は次回になります。
そして主人公は気付かなかったですが、スライムと集団は会話をしていました。
※イメージ
スラさん「このお方を誰と心得る!!」
集団「ははっー!」
魔人に就職しました。 第2話
前回のあらすじ:エレベーターを出たと思ったら草原だった…俺が何を言ってるか(以下略
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「さて・・・」
俺は今、少し遠くに見えた森林の目の前に来ている。
何故、俺がこの森林を目指したのか・・・理由は1つ。
実は俺は、こう見えて自然などが好きなんだ。生き物だったり、植物だったりと様々な自然に生まれて来た自然を見ると神秘的な何かを感じる。
現代の日本ではこんな立派な森林はまず見られない。こんな状況だが、いやこんな状況だからこそ少しでも貴重な体験をしようと思ったのだ。
「改めて見ても凄いな・・・」
よーく目の前の木々を見てみる。
木の一本一本がかなり大きく、見応えがある。木々は均等に配置されてる訳でもなければ、ぐちゃぐちゃに配置されてる訳でもない。確かに不規則に配置されてるのだが、それがどこか規則性を感じる。
森林の中は暗くもなければ、明るくもない。太陽の光が葉っぱの隙間からほどよく差し込むぐらいの明るさになっており、外から見ただけで心地よい場所だとハッキリと解る。
(ここにログハウスでも建てて住みたいなぁ)
頭に永住願望が浮かび、その光景に顔をニヤつかせる。そしてこの森林を改めて見た時から我慢していた足がついに動きだし、俺は素晴らしすぎる自然の中に入っていった。
どれくらい進んだろうか――
ふと、我に帰り自分がどれぐらいこの森林を進んだか気になった。
後ろを振り返り自分の進んできたであろう方向を見る。
目測でだいたい50メートル程の所に外の草原が見える。
これが何を意味するか―――
そう、たいして進んでないのである。
「フッ……」
この現象を起こした原因である大自然への感動と、かなりの距離を進んだと思っていたが実際には全然進んでない事の驚きが合わさり、自分でも解らない謎の笑みが溢れる。
こんな事をしてる場合じゃねぇな・・・
とりあえず、森林を抜けてみるか。
一端、冷静になりこれからの事を考える。森林に来たは良いが、そこから何をするかは未定だったため、とりあえず次の目標決めて、歩を進める。
「・・・何だ?」
森林を抜けるという新たに定めた目標を達成するために、前に体を向け直し、歩き出そうとした、瞬間――――
俺の目が奇妙な物を捉えた。
おかしい。
さっきまでは前方にあんな水溜まりはなかったはず・・・
いや、有ったのか?
俺が良く見てなかっただけか?
違うな。そこじゃない。
おかしいのはそこじゃない。
この際、あれが有った無かったはどうでもいい。
俺がおかしいと思ったのはその容姿だ。
先ほどは水溜まりか何か、かと思ったが違った。それはまるで水をそのまま丸いゼリーにした様な容姿だ。
何じゃ、ありゃ。生物・・・なのか?
少なくとも普通に森林で出会うものでは無いことは確かだ。
ひとまず、近くの木に身を潜めて様子を見てよう。
しばらく見ていたがその場に留まり、ただプルプルしてるだけで特におかしい様子はない。
いや、あの得体の知れない何か自体がおかしいのだが。
どうするか・・・
見た感じではあるが害は無さそうに見える。
あくまで俺の主観であるため実際には全然解らないが。
(思いきって近づいてみるか?)
あの存在を無視しても良いのだが、さすがにあんな得体の知れない塊を確認しておかないのは少し不安が残る。
気配を消し、姿勢を低くして草影からゆっっっっくりとその何かに近づく。
そのまま後ろからゆっくりと近づき・・・・・・
ちょっとまて、俺が今見ている方はあの物体の後ろ姿なのか?そもそもあの物体に後ろや前、といったものはあるのか?
目や鼻、耳といったある程度の生物にあるはずの顔の部分が確認できない。
得体の知れない物体の得体の知れなさを改めて認識した。何か外見的な特長は他に無いものか、そんな事を考えながら、その物体をじっと観察していると―――
―――くるり
その物体が振り返った・・・様な気がする。
「・・・・・・・」
今、謎のゼリー体に滅茶苦茶見られてる気がする。
目とかは無いが、めっさ見られてる感じがする。目と目が合ってる気がする。
ヤバイ、俺が見ていたのは後ろ姿
だったのか!?いや、今も後ろか前かはまったく解らないが。
現在進行形で謎のゼリー体と見つめ合っているが、敵意的な物は感じられない・・・
ならば!思いきってこちらも敵意が無い事を示してみよう!
低くした姿勢のまま利き手の右手ではなく、左手を自分の前に出す。一応、何があるか解らないので利き手は出さない用にした。そして目は謎のゼリー体を離す事なくじっと見つめ続ける。
1~2分程たった頃、謎のゼリー体に動きがあった。
なんと、謎のゼリー体が自分が出した左手に近づいてくるではないか!
内心ドキドキしながらその様子を、目を離さずに見続ける。
少しずつ左手と謎のゼリーの距離は縮まって行きやがて謎のゼリーが左手に触れる。
その時、俺の体に衝撃が走った。
「ッ――――!」
な、なんだこれは!
程よくヒンヤリとした温度!
一見、ヌメヌメしてそうな見た目に対し!実際に触れてみると、まるでサラッサラな水の塊を触っている様な手触り!
そして何より!この柔らかさ!
とても言葉では言い表せない!このっ!絶妙な柔らかさ!
「気持ちいい・・・・」
控えめに言って気持ちいい。
この世の物とは思えない感触に思わず声を漏らしてしまった。恐らく一生触っていても飽きない自信がある。
しばらく自分の手に伝わる圧倒的な衝撃を楽しんでいると―――
―――スリスリ
なん・・・だと・・・!?
そんな事があり得るのかっ!
まだ出会って5分もたってないんだぞ!
確かに俺は昔から動物に好かれやすい気がするが、こんなに早くは無かった筈だ!だが、しかし!
俺は今、このゼリーになつかれている!!
謎のゼリーがプルプルしている自分の体を、犬や猫が頬ズリする用に自分から俺の手にスリスリしている。素晴らしい。こん素晴らしい事があったのか・・・
良くみたらとても可愛いではないか。うん、可愛い。決めたぞ。最早これがどのような存在であるかはどうでもいい。俺はこれを持ち帰る事に決めたぞ。そのためには先ずはここを抜けなければいけないな。
両手で優しく掬い上げる用に持ち上げる。手に収まっているそれは、あいからわずプルプルしているが、それが可愛く感じる。
「よーし、よしよしよしよしよし」
優しく克つ丁寧に撫でまくる。
そして手にのせたそれの感触を十分楽しみながら、再び森を抜ける為に歩きだした。
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【キャラクター紹介】
[謎のゼリー体]
種族 スライム
ステータス
体力 F
魔力 F
知性 D
※人間の一般人の知性をBとする場合。
素早さ F
物理攻撃力 F
物理防御力 E
魔法攻撃力 E
魔法防御力 E
成長性 A
弱点属性 雷 炎
特異属性 光
主人公が異世界にきて初めて一番最初に出会った種族。
水をそのまま丸いゼリーにしたような見た目をしている。知性は魔物にしては低いわけではなく、CよりのDであり、魔物では中では良い方である。特に目や鼻などの器官は存在しないが、不思議な事に目は見えてるし、匂いも解るらしい。体温は低め。大きさは個々によって大きいものでボーリング玉ぐらいになる。重さは平均7~8キロ。手触りは見た目に反し、サラサラした水の様であり、スライム特有の絶妙な柔らかさを誇るプルプルボディは主人公が大絶賛した。
ほとんどのステータスが最低クラスであり、世間一般では魔物最弱であると知られている。
得意属性が【光】といった聖なる属性が得意である。魔物にしてはかなり珍しいが、そもそも光属性の攻撃手段を習得するのは人間でも困難を極めるため、ほとんど意味をなしていない。
ただ成長性だけは全ての魔物の中でぶっちぎりでトップクラスであり、ただならぬ可能性がそのプルプルのボディに秘められている。
一般的に成長した魔物は上位種になったりするが、一部だけ成長したものは【亜種】と区別され、ほとんどの場合は通常種よりステータスが高くなる。
魔人に就職しました。第1話
達人―――
一言で言うならそれは物事の道を「極めた者」を指す。
極めるという事はとても困難であり、並大抵の事では成せない。
とても多くの時間と労力が必要になる。
20XX年 日本
「就職しないとな・・・」
そんな言葉をボーっとしながら呟くこの男。
彼の名前は最上悟《さいじょうさとる》。
彼は現代では珍しいある道を極めた者。つまり【達人】である。
彼はとある理由から[剣術]という今の現代ではまったくと言って良いほど必要の無いものの達人になった。いや、なってしまった男である。
「ん"、ん"~~」
体を伸ばし、歯を磨き、顔を洗い、朝食を取り、リクルートスーツに着替える。
「就職しないとな…」と言う言葉を呟いた時点で気付いていると思うが、彼がこれから行う事。
それは、就職活動である。
つまりこの男は今現在、無職《ニート》である。
本来なら大学に行きゆっくりと就職活動をするはずだったのだがその時間を剣術に宛てられてしまった為に、今こうしてなかなか就職出来ない状況になっている。
何故、なかなか出来ないのかと言うと彼の学歴が「中卒」で止まっているのが問題なのである。
たとえ中卒でも書類審査は通る事は、もちろんある。だが次の面接の受け答えが何よりの、きっとこの男が就職できない何よりの問題であろう。
面接では当然聞かれる事。
「中学卒業してから今まで何をしていましたか?」
この質問。この質問に答えられない。
何故、答えられないか。
それは彼が中学卒業して直ぐに[拉致られたから]だ。
彼は何事も無い平凡な中学生活を過ごし、高校も平凡な公立に決まっており、何事もなく中学を卒業し高校へと進む予定だったのだ。
たが、彼は中学の卒業式の帰り途中に突然ある男に拉致られたのだ。
そのせいで拉致られてからの空白の7年間に何をしていたか答えられないでいる。もちろん|試行錯誤《しこうさくご》しているのだが、正直に「拉致られていました。」と言っても、「は?」という言葉が帰てくる。
また嘘を言おうとしても、特に資格を取ったりした訳でも無ければ、何か特別な事をした訳でもないので良い嘘が思い付かないでいた。
なので、なるべく面接がなく中卒でも良い会社を探して受けている。が、これまた中々うまくいかない。
(なんで、こんなことになったんだろうな・・・)
どこか遠い目をしながら靴べらを使い革靴を履く。
今日も1日中、就職活動。
彼は絶望した表情で玄関のドアノブに手を掛けてドアを―――
「あっ・・・」
開ける前に何かを思い出したらしく、早足で部屋に戻っていく。
「あぶねぇ、忘れる所だった」
男が取りに戻った物はギターケースだった。しかし、ギターケースを持ち上げると「ガタン」と、まるでギターとは別の、サイズの合ってない何か、が入っている様な音がした。
「よし・・・行くかぁ・・・」
ギターケースを背負い、再び靴べらを使い革靴を履き、玄関のドアノブに手を掛け、ドアを開ける。
するとそこは――――
特におかしい所はなく、彼がいつも玄関を開けたら目にしている光景だった。マンションの5階に住んでいる彼は向かいのマンションが見えるだけのどうでもいい景色を見ながらエレベーターのある方へと歩きだす。
エレベーターに乗り、目的地である1階のボタンを押す。するとエレベーターが動きだし、1階を目指して降りていく。エレベーターが下りていく特有の感覚を感じながら待っていると「1階です」と階を知らせる無機質な声がエレベーターから発せられる。
エレベーターのドアが開いたので、彼はエレベーターから降りていく。
1歩―――2歩――――
そして彼がエレベーターから完全に出た瞬間―――――
辺りは草原になっていた。
「・・・・・・・・・・え?」
しばしの沈黙の後に驚きの声を上げる。そして直ぐに後ろを振り返り、地上1階に自分を運んでくれた現代社会に欠かせない物、エレベーターの存在を確認する。
(・・・・・・・・・・無い)
しかし、そこに有ったハズのエレベーターは影も形もなくなっていた。代わりに、という訳ではないが、少し遠くの方に森林があることを発見した。
彼はとにかく何故自分がここにいるかを考えた。
たが、当然の如く答はでない。
何せエレベーターを降りた瞬間に辺りの景色が一変したのだ。
ワープやテレポーテーションなどの頂上現象の類い。
こんな事は現代の日本では基本的にありえない。
(一応、一番可能性があるものは催眠術的なものか?)
催眠術かそれに近いものを使い意識を飛ばし、その間に移動した。こう彼は推理した。
もし現代の日本でこのような事をもし出来るとしたら催眠術が一番可能性があると考えたのだ。
(でもなぁ、一瞬で催眠術なんて掛からないしな…)
催眠術は時間を欠けて相手に掛ける物であり、一瞬で意識を飛ばすのは不可能なはず。と考え直し、先程の可能性を否定していく。
(考えても答えでないな…これ…)
今のままでは情報が少なすぎるのでこれ以上の思考は無駄だと判断し、次に何をするかを考えながら、辺りを見渡す。
辺りは見渡す限りの草原で、後ろん振り返った時に少し遠くに見えた森林ぐらいしか、めぼしいものはなかった。
しばらく考えたあとに、何を思ったのか遠くに見える森林を目指して歩きはじめた。
歩きながら、これは日本ではありえない光景だな。そう思い彼は冷や汗を掻いていきながら森林に向かって歩いていく。
日本ではない。それもそうだろう。
彼は知らないが、そもそもここは世界そのものがちがう。
異世界なのだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とりあえず、1話です。短いですが、次からはおまけも含めてだいたい3000文くらいになります、